阿久根市長の発言で大牟田高校が駅伝辞退? の報道まとめ

阿久根市竹原市長のウェブ上の発言を問題視して大牟田高校が阿久根市の駅伝大会を辞退したという報道について、各報道機関の違いをまとめてみた。

まず記事タイトルを比較してみる。

次に記事の内容。

まずはブックマークが多く集まっているスポニチと西日本から。

鹿児島県阿久根市が14日開催する高校駅伝大会に選抜された福岡県の大牟田高校が出場を辞退していたことが5日、分かった。竹原信一阿久根市長の障害者差別とも取れる言動を問題視したとみられる。

http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100305025.html

鹿児島県阿久根市で14日に行われる「阿久根市長旗九州選抜高校駅伝大会」(同市主催)に選抜されていた大牟田高(福岡県大牟田市)が、出場を辞退していたことが4日、分かった。大会関係者や学校関係者によると、竹原信一市長の障害者に対する差別的な言動を問題視したという。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/156353

スポニチの記事は短かったので全文引用となった。スポニチの記事では、特に情報源についての記述はない。
西日本新聞によると、「大会関係者や学校関係者」が情報源のようである。

続いて、読売新聞と47NEWSの記事。

阿久根市は1月、大牟田高に出場を依頼したが、2月に文書で辞退が伝えられた。読売新聞の取材に対し、同校は「スケジュール調整や費用の問題」と説明している。大会事務局は「新チームの戦力を占う大会で、大牟田高の活躍を楽しみにしている市民も多い。市長のブログが辞退の原因であれば残念だ」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100305-OYT1T00608.htm

大会事務局によると同校は2月、はがきで「参加できない」と回答した。
辞退の理由について同校は「試合数が多すぎるので出場する大会を見直した」と説明しているが、大会関係者は「(同校が)竹原市長の言動を問題視したと聞いている」としている。

http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010030501000224.html

大牟田高校の説明によると、「スケジュール調整や費用の問題」「試合数が多すぎるので出場する大会を見直した」ということである。西日本新聞スポーツニッポンの記事にはなかった記述である。西日本新聞では情報源に「学校関係者」を挙げていたが…。
細かいところをつつけば、読売の記事に書かれた大会事務局のコメントの「市長のブログが辞退の原因であれば」という表現がひっかかる。市長の発言が辞退の原因かどうか、大会事務局もはっきりと把握していないということだろうか。

産経新聞では。

大牟田高校は「まったくの事実無根。どうしてこういう話になっているのか分からない。出場試合数が多すぎるので、スケジュールを見直しただけ」と困惑気味。駅伝を主催する阿久根市体育協会事務局も「何でこういう話が出ているのかこちらが知りたい。(同校から)不参加の知らせを受けて、代わりの参加高校を探していた」と、報道を否定している。

http://sankei.jp.msn.com/sports/other/100305/oth1003051036001-n1.htm

産経新聞の記事の前半部は47NEWSの記事と同じ文面である。47NEWSとおなじく、これは共同配信の記事であろう。
ただ、後半部には47NEWSにはなかった記述がみられる(上に引用した部分)。それによると、大牟田高校も、駅伝の主催者である阿久根市体育協会事務局も、「竹原市長の言動を問題視した」という辞退の理由を否定している。

まとめ

  • スポニチには情報源の記載がない。
  • 西日本、読売、共同の報道では、大会関係者によると、辞退の理由は市長の発言を問題視したこと。
  • 読売、共同によると、大牟田高校は試合日程の都合と説明しており、市長の発言との関係は否定。
  • 大会事務局は読売に対し「市長のブログが辞退の原因であれば残念」とコメント。産経(共同)に対しては否定。

マスコミの報道では情報源として「関係者」という言葉がよく使われるが、読売、共同の記事では「大会関係者」と「大会事務局」が使い分けられていることから、それぞれ別の情報源であると考えられる。この「大会関係者」が何者なのか、かなり気になる。
この件は阿久根市長の発言の影響であるかどうかはかなり疑わしい。もちろんそうではないと言い切ることも出来ないが、少なくともこれは「判断は保留」とするべきものである。はてなブックマークでは、大牟田高校と大会事務局からのコメントが載っていないスポーツニッポン西日本新聞の記事にブクマが集まっているし、真偽が不明確なまま、事実として広まりそうな点は気がかりである。

おまけ

大牟田高校によると「スケジュール調整や費用の問題」「試合数が多すぎるので出場する大会を見直した」とのことであるが、これについても検討してみる。

確かに3月はスケジュールが過密となる時期である。
3月21日には長野県で春の高校伊那駅伝が、27日には新潟県高校駅伝弥彦大会が開かれる。いずれも全国から強豪が集まる大会である。
伊那駅伝のホームページによると、大牟田高校は出場することになっている。
http://www.inacity.jp/view.rbz?nd=730&of=1&ik=1&pnp=21&pnp=618&pnp=730&cd=6938
一方、弥彦駅伝に大牟田は出場しない(もっとも一昨年までは頻繁に出場しているが)。
http://www.vill.yahiko.niigata.jp/ekiden/2010ekiden-sankakou.pdf (PDF注意)

負担の大きさを考えれば、遠くへ遠征することになる伊那駅伝よりも、阿久根の方に出るべきだ、という意見もあるかもしれないが、九州のみの大会でなく、全国の強豪と戦える伊那の方を選んだと考えれば、これも説明がつく。

これらから考えて、高校側の説明には特に不自然な点はないと思われる。